甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい
間宮さんは、私の腕からぷーすけを抱き上げる。

微かに触れる腕と腕。

「これで決まり」

彼は呆然と立ち尽くす私を置いたまま笑いながらぷーすけとソファーに戻った。

「お前はどうするかなぁ。連れていくかお留守番か」

間宮さんはぷーすけの顔と自分の顔を突き合わせるようにしておどけた調子で言った。

「広瀬さんはどうした方がいい?」

ふいに私に顔を向けて尋ねる。

「もちろん……」

もちろん……ぷーすけはお留守番で間宮さんと二人で出かけたい。

けど、そんなこと言えない。

「週末、行く場所でお前が迷子になったら困るんだよな」

間宮さんは眉間にしわを寄せぷーすけに再び顔を近づける。

「迷子になるような場所ですか?」

「ちょっと無人島まで出かけようと思って」

「無人島……。無人島??」

思わず声がひっくり返った。

「僕は自分の船を持ってるんだ。時間ができるたびに船でぶらっと出かけるんだけど、この間、友達から教えてもらった無人島があってね。あまり知られてない誰も人の来ない美しい島らしくて、是非行ってみたいなと思って」

間宮さんの言葉の断片断片が想像を超えていて、着いていくのがやっとだった。

ようやく自分の中で咀嚼して、そのイメージを頭で膨らませる。

船で出かけることも、無人島に降り立つことも初めてでそのイメージがどれくらい当たってるのかすらわからないけれど。


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