甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい
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その日はまだ暗いうちから、車で彼の船を停泊させている港まで向かう。

週末のお天気は、一日晴れマークがついていたので間宮さんはほっとした顔をしていた。

「船はとりわけお天気に左右されるからね。少しでもやばいと思った時は船を出さないとことにしてるんだ」

暗かった空が少しずつ白んでいく。

そのうち辺りの景色もその輪郭を浮かび上がらせてきた。

山並みが続く向こうに海が見える。

早朝の海は波一つなく、静かに漂っている。

太陽が昇り始めると水平線がオレンジ色に染まった。

運転席に視線を向けると、間宮さんのきれいな横顔もうっすらとオレンジに染まっている。

そんな間宮さんが私にふいに視線を向けて「ん?」と首を傾げた。

「きれいだな、と思って」

慌てて、はぐらかす。

はぐらかしたけれど嘘をついたわけじゃない。

海のオレンジも、間宮さんのオレンジに染まった横顔もとてもきれいだと思ったから。

リュックに入れた炭酸水を取り出し一口飲んだ。

私の一日の始り。

初めてだらけの一日になるかもしれない。

昨夜は興奮していたのかなかなか寝れなかった。

ワクワクとドキドキは少し違うけれど、今はどちらも私の中にある。



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