甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい
船内には赤いじゅうたんが敷かれていて靴を脱ぐことができた。

ソファーもテレビも備え付けてあり、その奥には寝室もある。

間宮さんの操縦する船がゆっくりと船着き場を離れていく。

そして、次第にそのスピードを上げた。

船内から外に出ると、白い波しぶきが泡になって後方に飛んでいく。

何の障害物もない青い海と青い空の間を突き抜けて進む船は、爽快だった。

ようやくゲージから出されたぷーすけは、初めての船に戸惑い私のそばから離れようとしなかったけれど少しずつ周りの匂いを嗅ぎながらその行動範囲を広げていった。

操縦席から間宮さんが手招きしている。

私はぷーすけを抱いて間宮さんのいる操縦席に急いだ。

操縦席からの眺めはまた格別で、まるで自分が船と一体になってるかのような錯覚を覚える。

ぷーすけも気分がいいのか、何度も海に向かって嬉しそうに吠えていた。

「どう?」

間宮さんが前方に目を向けたまま尋ねる。

「最高に気持ちがいいです」

そう答えた私に彼は口元を緩めた。

無人島には本島から2時間ほどで到着すると鍋島さんは言っていた。

「ぷーすけの世話で困ってることはない?」

「いえ、大丈夫です」

「何か僕に言っておきたいこともない?」

「別に……ないです」

本当は間宮さんには聞きたいことは山ほどある。

ぷーすけとの生活のことじゃなくて、間宮さん自身のこと。

どんな女性が好きなのか。

今までどんな人と付き合ったことがあるのか。

今、好きな人はいるのか……。

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