甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい
「それ以上聞いてもいいんですか?」

「いいよ」

もう一度ふぅーと息を吐く。

「その好きな人はどんな人なんですか?」

間宮さんはその質問にはさっきみたいに即答しなかった。

しばらく考えて、静かに答えた。

「とてもいい子だよ」

「いい子?」

「ああ。だけど自分がどれだけいい子かってことに気づいてない」

自分がいい人だってことに気づいてないなんて、どれだけいい人なんだろ。

でも、間宮さんだけはちゃんとそのことに気づいてる。

『いい子』の存在を思い、切なくなった。

でも、そんないい子だったら間宮さんが好きになってもしょうがないか。

「間宮さんがいい人を好きでよかったです」

あきらめるのとはちょっと違う、間宮さんが幸せならそれでいいっていう思いがそんな言葉になった。

間宮さんが口元を緩め、こちらに視線を向ける。

「もうすぐ着くよ。ほら、見えてきた」

水平線にぽっかりと緑の小さな島が浮かんでいる。

次第に近づいてくると、あふれるような緑と白い砂浜が迫ってきた。

まるで南国みたいに透明度の高い波がその白い砂浜に寄せては引いてを繰り返している。

「本当に美しい島だね」

間宮さんの声がとても穏やかだ。

きっとこの空気と景色は疲れた間宮さんをきちんと癒してくれる。

ここに来てよかったと心から思った。
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