甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい
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T大学の教授の父、高校教師の母を持つ私は厳格な庇護の元で育てられた。

大事に育ててもらったことは今でも感謝しているし、そんな両親を尊敬している。

とりわけ母の言うことは間違っていると感じたことはなかったし、実際母の言うとおりにしていれば何の問題も起きない。

物心ついたころには、母の言うことが絶対なら、少し自分の中で納得がいかないことがあったとしても何も言い返さないという選択をするようになっていた。

要は、母には絶対服従。

そうすることが、楽に生きれる道。

両親が機嫌がいいということが家族にとって一番なんだって。

門限は大学に行っても二十時だったし、合コンと名の付くものには行ってはいけない。

バイトもダメ。

友達と遊びに行くときは母が知ってる友達とでないとダメ。

犬は飼っちゃダメ。

洋服は、母があてがったものじゃないとダメだった。

そんな私が自分のそんな生活に疑問を持ち始めたのは、弥生に全てをさらけ出した時だ。

今まで何の疑いもなく従ってきた我が家の約束事が、実は普通よりもかなり厳しいという事実。

弥生からは、少しずつ親と距離を置いた方が私が楽になると言われた。

親の言う通りにすることが一番楽なんじゃなかったの?

だけど誰より信頼している弥生が私に嘘なんかつくはずない。

私は社会人になったのを機に、思い切って一人暮らしがしたいと母に告げたんだ。

清水の舞台から飛び降りるって、こんな気持ちなんだろうとその時思った。
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