甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい
ガサガサという音はだんだんと近くで聞こえ始めた。

何かがいる。

ぷーすけではないの?

目を凝らして音のする方をじっと見つめた。

何かがぴょんと跳ねる。

薄茶色の長い耳が見えた。

野ウサギ??

この無人島に野ウサギがいるなんて。昔誰かが飼ってそのまま野生化したのかもしれないわね。

野ウサギは二匹いるらしく、時折こちらに顔を向け鼻をピクピク震わせながら、少しずつ遠ざかっていく。

この辺りに野ウサギの住む洞穴でもあるのかしら。

もしかしたら、ぷーすけはこの子たちを追いかけてきたの?

その時、額に冷たいものがポツンと当たる。

上を見上げると木々の間から見える空は真っ黒に渦巻いていて雨が落ちてきていた。

と思っていたら、一気にスコールのような雨が地面を打ち付ける。

痛いくらいの勢いの雨は容赦なく黒雲から降ってきた。

その瞬間、ピカッと空一面明るく光り、空を割るようなものすごい音で雷鳴が響き渡った。

ここにいちゃ危ない。

私は素早く森林の中へ逃げ込んだ。

島の中央に小屋があるって鍋島さんが言ってたっけ。

ぷーすけは無事だろうか。雷が嫌いな子だったから。

後ろ髪が引かれながらも島の中央に向かって走り続けた。
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