甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい
そう言うと、彼は私の耳にもキスをする。

拒否したいような、したくないような、思わず声が漏れてしまいそうなピリピリとした感覚が私の体を掛けめぐる。

彼になら、全てを預けてもいい。

もっと彼を知りたいし、私のことも知ってほしい。

「はい、お願いします」

彼の潤んだ瞳をしっかりと見つめながら答えた。

間宮さんはフッと笑いうつ向き、息を吐きながら言った。

「よかった」

「?」

「君はまっすぐだから急にキスなんかしてくるような男は嫌いだと思ってた」

彼は顔を上げると私の頬にかかる髪をかき上げ、額と額をくっつけた。

間宮さんの額は少しひんやりとしている。

「人によります」

私は彼の冷たい額を心地よく感じながら続けた。

「だって、私、ずっと間宮さんのこと大好きだったから。ずっとこんな風にしてほしいって思ってました」

「そんな素直に言われちゃ、歯止め利かなくなるよ」

間宮さんはそう言って笑うと、もう一度私の唇を優しく塞ぐ。

とうとう言っちゃった。

その甘いキスと彼からの告白に自分の本能が投げ出されたかのように。

素直な自分の気持ちがあふれでた。

甘い。
とてもやさしくて、でも、なぜだか胸が締め付けられる。

キスって、こんなにも素敵なものだったんだ。

大好きな人とのキスが初めてのキスでよかった。

私はそっと彼の背中を抱きしめた。

私の中の何かが壊れていく。

壊れた中から、きっと本当の私が生まれてくるんだ。

それは彼への気持ちの殻が破れた瞬間だった。
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