甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい
雨はもうほとんど止んでいる。

ポツンポツンと屋根に不規則に落ちてくる雨音がさっきまでの激しい雨の余韻を微かに残していた。

彼に肩を抱かれたまま座っている。

ぷーすけはようやく落ち着きを取り戻し、小屋の中を走り回っては短い尻尾を必死に振りそこら中クンクン匂いを嗅いでいた。

何も言わなくても、彼の体温を感じているだけでこんなにも幸せな気持ちになる。

少しずつ空が明るくなり、日が玄関口に差し込み始めた。

湿った空気を照らす日の光を見つめながら思わず尋ねる。

「どうして、私のこと好きになってくれたんですか?」

彼は視線だけ私の方に向けて少し微笑む。

「どこまでもまっすぐで、ひたむきで、ぶれないところ」

「でも、いいように言えばそうですけど、裏を返せば真面目すぎて融通のきかないおもしろみのない人間です」

「さっきの君の言葉を借りるなら、『人による』んじゃない?僕にとっては君のその部分がとても刺激的で興味が沸いて魅力的だと思った。そして、そんな君が殻を破るところを見てみたい。きっと殻を破った後の君は一層魅力的だって思うから。今だって殻を破っただろう?キスをした後の君はとても艶っぽくて匂いたつような色気があった」

「そんな恥ずかしいこと言わないで下さい!」

私は思わず顔が熱くなって両手で顔を覆った。

そんな……そんな、艶っぽい顔してたのかしら、私?

私みたいな人間はどうあがいたって色気とは無縁だと思っていたのに。


< 152 / 233 >

この作品をシェア

pagetop