甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい
雨がようやく上がったのでぷーすけを抱いた間宮さんと船に戻る。

かなりの雨量だったことがうかがえるほど、地面はドロドロでぬかるんでいた。

なぎ倒された草木と泥に足元がとられていたら、彼が私の手を握ってくれたので、少し恥ずかしかったけれど、その手をしっかり握り返す。

こんなにも一人で歩いてきたのかというくらいの距離。

道なき道を一人でぷーすけを探しに行くなんて、今更だけど無謀なことをしたものだ。間宮さんが真剣に怒っていたのも無理はない。

20分ほど歩いてようやく海が見えてきた。

しっかりと固定された間宮さんの船が、まだ嵐の後の高めの波に大きく上下している。

船にたどり着き、船内に入ると無線機が鳴っていた。

間宮さんが慌てて無線を取ると、鍋島さんからの着信だった。

『どうだ?そちらは大丈夫か?』

「ああ、なんとかね。とりあえず嵐が来るって情報を海斗がくれなかったら途方に暮れてたところだ」

『こちらも本島に戻ってきた直後に雨が降り出して危機一髪だったよ。あの小屋はそれなりに使えただろう?』

間宮さんは私を意地悪な顔で見つめながら答える。

「そうだな。最高の場所だったよ」

『意味深な返事だな。さては、あのかわいこちゃんに悪さしただろう?』

「悪さなんてするかよ」

こちらの反応を見ている彼の視線に耐えられなくなってうつむく。

あの甘いキスが蘇って顔が熱い。


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