甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい
『嵐はどこかへ行っちまったから、もう大丈夫だ。夕方までゆっくり遊覧でも楽しめば?島はさすがにさっきの嵐で荒れて歩き回るには危ないだろうから』

「そうだな」

間宮さんは自分の腕時計に目をやる。

「今三時回ったところだから今からゆっくり帰ったらそちらにはいい時間に着くだろう。そうさせてもらうよ」

『ごゆっくりー』

鍋島さんがにやにやして言っているような気がした。

でも、今はそんな冷やかしですら嬉しい。

だって、間宮さんと気持ちを確かめあった後だから。

無線が切れると、彼が私の方に振り返り「ゆっくり帰ろうか」と微笑む。

固定していた船をビットから外すと、船はゆっくりと出航した。

嘘みたいに晴れ渡った青空が濡れた船を一気に乾かしていく。

波は行きよりも高めだったけれど、ジェットコースターみたいで楽しい。

でも、さすがに揺れがきつかったのかぷーすけは船内でぐったり寝てしまっていた。

運転席には私と間宮さんの二人。

行くときは、お互いの思いを知らなかったのに、帰りはお互いの気持ちを確かめ合った後。

彼の手はずっと私の手を握りしめていた。

「もう少し行くと全方面水平線って場所になる。そこで少し船を停めてゆっくりしようか」

「はい」

見渡す限りの水平線。
どこまでも続く青。

甲板に出て二人で並んで座った。
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