甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい
目をつむると、波の音しか聞こえない世界。
大海原に囲まれた二人の存在はとてもちっぽけかもしれないけれど、私には今、間宮さんの存在がものすごく大きい。
冷蔵庫に冷たく冷やした炭酸水を彼から手渡される。
いつも朝しか飲んでない炭酸水は日中の暑い日差しを受けて飲むと一層おいしく感じた。
からからに乾いた私の喉を潤していく。
「広瀬さんのこと、下の名前で呼んでいいかな」
甲板に足を投げ出し、炭酸の瓶を手に持った彼が不意に言う。
名前で男性に呼ばれたことのない私は、いいも悪いもこたえる権利なんかない。
「お好きに呼んでもらえれば」
炭酸水の瓶からしたたり落ちる水滴を見つめながら答えた。
「凛」
すぐに彼が私の名前を呼んだ。
『凛』と呼ぶ間宮さんの声はいつも『広瀬さん』と呼ぶ声とは違うような気がしてドキドキする。
「は、はい」
「凛も、僕のこと下の名前で呼んで」
「そんなこと急に言われても呼べません」
正直な気持ちだった。
だって、ついさっきまで私の中では間宮さんという憧れの存在だったんだもの。
「凛」
間宮さんが私の手を取り、自分の方へ引き寄せた反動で彼の胸に私の顔が埋まる。
「恥ずかしかったら顔見なくていい。呼んでほしいんだ。もっと凛を近くに感じたいから」
「い、……いつ……いつ、きさん」
きゃー、呼んでしまった。
目をぎゅっとつむると、彼の鼓動が私の頬から伝わってきた。
「言えたじゃん」
樹さんは目を細めて笑った。
「意地悪な人は嫌いです」
「嫌い?」
彼はおどけた表情で私の顔を覗き込む。
大海原に囲まれた二人の存在はとてもちっぽけかもしれないけれど、私には今、間宮さんの存在がものすごく大きい。
冷蔵庫に冷たく冷やした炭酸水を彼から手渡される。
いつも朝しか飲んでない炭酸水は日中の暑い日差しを受けて飲むと一層おいしく感じた。
からからに乾いた私の喉を潤していく。
「広瀬さんのこと、下の名前で呼んでいいかな」
甲板に足を投げ出し、炭酸の瓶を手に持った彼が不意に言う。
名前で男性に呼ばれたことのない私は、いいも悪いもこたえる権利なんかない。
「お好きに呼んでもらえれば」
炭酸水の瓶からしたたり落ちる水滴を見つめながら答えた。
「凛」
すぐに彼が私の名前を呼んだ。
『凛』と呼ぶ間宮さんの声はいつも『広瀬さん』と呼ぶ声とは違うような気がしてドキドキする。
「は、はい」
「凛も、僕のこと下の名前で呼んで」
「そんなこと急に言われても呼べません」
正直な気持ちだった。
だって、ついさっきまで私の中では間宮さんという憧れの存在だったんだもの。
「凛」
間宮さんが私の手を取り、自分の方へ引き寄せた反動で彼の胸に私の顔が埋まる。
「恥ずかしかったら顔見なくていい。呼んでほしいんだ。もっと凛を近くに感じたいから」
「い、……いつ……いつ、きさん」
きゃー、呼んでしまった。
目をぎゅっとつむると、彼の鼓動が私の頬から伝わってきた。
「言えたじゃん」
樹さんは目を細めて笑った。
「意地悪な人は嫌いです」
「嫌い?」
彼はおどけた表情で私の顔を覗き込む。