甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい
中盤まで読み終えた私は一度本を閉じる。

そして、少し疲れた目を公園の緑で休めることにした。

五月の新緑はまぶしいくらいにキラキラと輝いている。

つい先月はピンクで染まっていた桜の木が今は緑の葉をたわわに揺らしていた。

芝生の上では家族連れがバトミントンをしたり、お弁当を広げて楽しんでいる。

そして、時々二人連れが私の前を通り過ぎていった。

楽しそうに彼氏の顔を見上げて話す彼女の眼はイキイキと新緑さながらに輝いていて、そんな彼女を優しく見守るように彼氏が見つめている。

いいな。

そんな男の人だったら付き合ったっていい。

キスしたっていいって思えた。

間宮さんは、今頃どうしてるんだろう。

日曜日だから仕事もお休みだろうし、だれかと遊びに出かけてるのかな。

あんな素敵な人だから彼女がいたって不思議じゃない。

彼の隣で手をつないで歩いてる女性を想像したけど、すぐに頭の中でその女性をかき消した。

「ワンワン!」

少し離れたところから犬の鳴き声が聞こえる。

誰か散歩でもしているのかしら。

「待てって、こら!」

その鳴いている犬の飼い主らしき男性の声が響いてきた。

きっと犬が飼い主の手から離れて逃げ出したのね。

なんとなくその犬と飼い主の声の方に顔を向けた。
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