甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい
「実は僕たち今付き合っています」

何と言っていいかわからず戸惑っている私の横で樹さんははっきりと告げた。

「あら、やっぱり?」

瀬戸さんは口元に手をやり、私を見て優しく微笑む。

「なんとなくこうなるような予感があったの。とてもお二人はお似合いだったから。それに、最初から縁があったものね」

「ええ、まぁ」

樹さんは頭を掻きながら私に視線を向けると、少しはにかんだ。

「ひょっとして、このぷーすけが良縁を運んだのかしら?」

瀬戸さんはぷーすけに顔を近づけておどけた調子で笑った。

「本当に」

そんな瀬戸さんに私は真面目な顔で続ける。

「ぷーすけは私の恩人です」

「そう。ぷーすけにとっても広瀬さんは恩人だわ。出会うべくして出会ったのかもね」

出会うべくして出会った。

それを運命っていうのかもしれないけど、今はそれ以上の繋がりを感じていた。

自分の半分をもぎとられるような寂しさ。

瀬戸さんとぷーすけは笑顔で玄関を出ていった。

ずっと堪えていたものが体の奥からあふれてくる。

「ぷーすけ、行っちゃった……」

樹さんがそっと私を抱きしめた。そして私の耳元でささやく。

「僕をぷーすけだと思って、いつも抱き上げてくれて構わないよ」

「もう!こんな時に!」

涙目で軽くにらむも、おどけた表情の彼に笑ってしまう。

「やけちゃうな。ぷーすけに」

樹さんは私の瞼に軽く唇を当てた。

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