甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい
「ぷーすけはあるべき場所に戻っていっただけだよ。これから会おうと思えばいくらだって会えるさ」

「はい」

私は彼の腕をきゅっと握りしめた。
あるべき場所に戻ったぷーすけにいつまでも後ろ髪ひかれていられない。

私は私のあるべき場所を目指さなくちゃ。

そこから私の人生が始まるんだから。

窓の外は夕暮れ色に染まっていた。

本当はもっと樹さんのそばにいて、いつまでも抱きしめてほしかった。

だけど、そんな甘えたことばかりしてたら、きっと自分はだめになる。

「そろそろ私も帰ります」

「一緒に晩御飯でもと思ってたんだけど」

「私もそうしたいですけど、来週のトリマーの講義の予習をしておきたいので」

「うーん。それじゃしょうがないな。今日は僕も我慢するか」

そう言うと、樹さんはもう一度ぎゅっと強く抱きしめてくれた。

それだけで、しばらくがんばれるような気がする。

家まで車で送ってくれた彼に手を振り、空を見上げると白い満月がふわりと夜空を明るく照らしていた。
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