甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい
「資格が取れた後、凛が僕に頼んだ約束覚えてる?」

とうもろこしにかぶりつきながら彼が横眼で私を見た。

あ。

樹さんに初めての人になってもらうってお願いしてること。

やっぱりちゃんと覚えてたんだ。

っていうか、あらためてそんな風に言われたら恥ずかしくて逃げ出したくなるんですけど。

「はい。もちろんです」

「顔真っ赤だよ」

樹さんはニヤッと笑って私を見下ろす。

「そんな意地悪なこと言わないで下さい」

「凛の覚悟は本気だったのかなってさ。とりあえず勢いで言っちゃったんじゃないかって時々心配してたんだ」

そんなこと心配してくれてたの?

「本気です。今もずっと。樹さん以外考えられません」

「ん、じゃその日を僕も楽しみに待ってる」

「はい、私も楽しみに……」

と言いかけて思わず口をつぐむ。

そんなこと、私の口から楽しみだなんて言うなんておかしいよね。

言いかけて恥ずかしさでまたドキドキが加速した。

楽しみっていう言葉がふさわしいのかどうかはわからないけど、私にとっては未知の世界で、ようやく心も身体も許せる相手と一つになれる日。

本や映画でしか知らないことだけれど、きっとそれはとても幸せで感動的で記念すべき時間なんだと思う。

でも、少しだけ怖いっていうのも正直な気持ち。

怖い気持ちを全て預けれるのがきっと樹さんなんだ。

それからもう一つ。

彼に抱いてもらう前に両親に自分の思いを伝えに行くんだ。

その二つはとても緊張すること。

私の人生の中でもきっと最大級に特別な時間。

刻々と迫るその日を迎えた時、私はどんな風に変わっているんだろう。

なりたい自分にちゃんとなれているのかな。





< 205 / 233 >

この作品をシェア

pagetop