甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい
「凛が資格試験の勉強をがんばっている間に、前の船よりも少し大きい船を購入して、その船内をリフォームしたんだ」

「もしかして船内は樹さんのデザインですか?」

「もちろん」

あんなに仕事も忙しかったはずなのに。

「ほら、海が見えてきた」

くっと上げた彼の顎の先には、水平線が広がっていた。

青い空に平行に走る青い線がとても美しい。

砂浜の向こうに港が見え、何艘もの船が帆を立てて並んでいた。

既に水平線に向かって出航している船もある。

「ここは個人の船を停泊できる港なんだ」

高速を降り、港近くの駐車場で車を降りた。

私の手を取った彼は港へと歩みを進める。

並んだ船の上にはたくさんのカモメが楽し気に飛んでいる。

一艘の船の前で彼は足を止めた。

真っ白で以前よりも一回りも大きな船がここちよく波に揺られて停まっていた。

船の甲板には、金色と赤で、幾何学的な模様がシンプルに施されていてその白さが一層引き立つ。

「とても美しい船……」

「凛のことを思ってデザインした」

思わず見とれて立ち尽くす私に「さ、船内も見て」と彼に促され船に乗り込んだ。

船内も広く、奥には寝室が二部屋、広めのリビング、キッチンも備え付けられている。

落ち着いたシックなあずき色の絨毯に壁は木目調。

所々に甲板に施された模様が彩られていてとてもおしゃれだ。

リビングには大きめの丸い窓が四つもあり、外からの光でとても明るい。

「高級ホテルの一室みたいだわ」

「気に入った?」

「気に入らないわけない」

私は彼の顔を見上げ、感動で声が震えた。




< 219 / 233 >

この作品をシェア

pagetop