甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい
弥生は相変わらず男性さながらの営業職で、数多くの有名量販店に商品を卸し、その売り上げにつながる企画まで一切合切任されているらしい。

売り場でどうすれば売れるのか、陳列の仕方一つで変わってくるんだとか。

私みたいに上司から言われた仕事を単にこなしているだけではない弥生の仕事ぶりは聞いているだけでわくわくした。

わくわくして、そして弥生と自分との歴然とした差にだんだん落ち込んでいく。

「で、凛はどう?今の仕事」

「うん、皆とても優しくて働きやすいわ」

「庶務的な仕事してるんだったっけ?」

「うん、そう。庶務っていうか弥生なんかと比べたら誰にでもできる簡単な仕事だよ」

「ふぅ。凛は相変わらずだなぁ」

「え?」

顔を向けると、彼女はローズ色のカクテルを傾けながらふふふと意味深に笑いつぶやくように言う。

「いつ会っても本当に妬ましいくらいかわいい顔しているのに」

そして、私に顔をぐっと近づけて続けた。

「凛の目、死んでる」

「ちょっと!それは失礼ね」

今一番痛いところをピンポイントで突き刺されたような感覚。

弥生はいつだって、私の真髄をついてくる。

「面白くないのは、自分で面白くしてないからよ。いつまでくすぶってるの?」

「ずっと探してるわよ。高校の時からずっとね」

「自分の殻破った?」

そんな彼女からの問いかけに、私は黙ったままオーシャンブルー色のカクテルに口を付けた。




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