甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい
それに、どうして二足のワラジなんか履いてるんだろう。

デザイナーだけでも十分やっていける人なのに。

「昼間はデザイナーで夜は遅くまでこのお仕事したりして大変でしょう?」

「そうだね。確かにきついときもある。だけど、面白いよ。この仕事はデザイン業にも確実に生かせてる。むしろこの仕事があるから僕のデザインはより創造性が豊かになってるのかもしれないな」

そう言った間宮さんの横顔はこんな夜更けなのになぜかとても清々しくて少しも疲れているようには見えなかった。

「色んな人と出会えて、困ってることを分かち合ったり、必要なものを一緒に探したり。誰かの生きざまに直に触れるような機会なんてなかなかないだろう?他人が本当に求めてるものなんて、この仕事をするまで僕には全く想像もつかなかった」

きっとつらいこと以上に、彼にはこの仕事から得られるものがたくさんあるんだ。

誰かが本当に求めているもの。

私にもその想像力は足りないような気がする。

だから、いつもつまらないって言われるのかもしれない。

「人間って独りよがりな生き物ですもんね」

私はフロントガラスの暗闇に映っては流れていく明かりをぼんやりと眺めながらポツリとつぶやいた。
< 45 / 233 >

この作品をシェア

pagetop