甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい
もっと知ったら、きっと面白みのない人間だってばれてそれ以上関わることも嫌になる。

これまでも皆がそうだったみたいに。

「私、間宮さんが思ってるような人間じゃないと思います」

そんな私の小さな声はブレーキ音にかき消され、車は目的地の前に停車した。

封筒を手にした店長はすぐに店から出てくると、間宮さんに親しげに笑いかける。

「お久しぶりです」

間宮さんも嬉しそうに笑い店長に頭を下げた。

「こんな機会でもないとなかなか会えないもんな。間宮くんはその後変わりはない?」

「はい、何とかやってます。それにしても今回は助かりました」

私も慌てて彼の横に並び頭を下げる。

「はい、大事な封筒、確かにお渡しするよ」

店長は私に封筒を差し出したので、私は「ありがとうございました」と言い受け取った。

確かに『間宮デザイン 間宮樹様』宛の封筒。ようやく手元に戻ってきたことに安堵し、体中の緊張がほどけていく。

封筒を胸に抱きながら、宛先に書かれた間宮さんの運転する車に乗っていることにあらためて不思議な感覚になる。

「その封筒、もらって帰ろうか?」

彼は前を向いたまま静かに言った。

「どうせ明日うちの社まで届けに来る予定だったんだろう?」

「はい、そうですが……」

でも、この封筒を今渡しちゃったら、もうそれきり彼とのつながりが切れてしまうようで怖いような気がしていた。




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