甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい
お昼に近い午前中。

いつもよりも公園は人気が少なく感じた。

薄曇りで肌寒いせいだろうか。

人の少ない静かな公園も好きだ。

私はいつものベンチに腰を下ろしたけれど、すぐには本を広げずしばらくベンチにもたれ辺りを見回した。

腕時計に目をやる。確か前に会った時もちょうどこれ位の時間だったっけ。

胸がドキドキとざわつき、今は集中して文字を読み進められる気がしない。

強めの風が吹き上げ、目の前の桜の葉を散らした。

その時、リュックの中でスマホのバイブが振動しているのに気づく。

慌ててリュックをごそごそ探り、底に転がっていたスマホを取り出して耳に当てた。

「はい、広瀬です」

『広瀬さん?……間宮ですけど』

ま、間宮さん?!

まさかの彼からの電話に、一気に体中が熱くなる。

『突然の電話、ごめんね。今何かしてる?』

「いえ、何も」

自分のリュックを胸にギュッと抱えた。

『実は、君に急遽相談したいことがあって。もし大丈夫ならこれから会えないかな』

「え?は、はい、だ、大丈夫です」

間宮さんとこれから会う約束するなんて。

まさか、そんなことになるなんて!

大きく深呼吸した。

そしてキャップをぐっと目深に被ると、リュックを胸に抱えたままベンチから立ち上がる。

間宮さんに今公園にいると伝えたら、すぐに公園の前まで迎えに行くと言われた。

相談したいことって何だろう。

今はまだ全く見当もつかない。
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