甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい
エレベーターに乗り込むと、次第に緊張がマックスになり体が硬直していく。

前を向いたまま身動き取れない私を見下ろした間宮さんは少し笑った。

「緊張してる?」

「もちろんです」

「その様子だと、男の家に一人で出かけたことないだろ」

なんとなく「はい、そうです」と言いたくなくて黙った。

「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。家には僕一人じゃないから」

思わず、彼の方に顔を向け大きく目を見開いた。

「そうなんですか?」

それならば早くそう言ってくれればいいものを!

こんなに自責の念に駆られ不安になっていたというのに。

安堵する一方で、なんだかしぼんでいく気持ちもあった。この気持ちは一体?

エレベーターを降り、間宮さんが自分の部屋の玄関にカードキーを当てるとロックが外れる音がした。

ゆっくりと扉が開いていく。

誰がいるんだろう?

ドキドキしながらその扉が開いていく先を見つめていた。
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