甘くてやさしくて泣きたくなる～ちゃんと恋したい
*******

彼女の名前は、瀬戸風香さん。もうすぐ三十歳になると言っていた。

間宮さんが「僕よりも一つ下だ」と言っていたから、彼は三十一歳なんだとさりげなく心に留める。

風香さんは幼いころから心臓が悪くて、何度も入退院を繰り返していたらしい。

三年前、知り合いから譲ってもらったぷーすけをかわいがっていたけれど、心臓の持病が悪化しその世話をするのが難しくなったため、間宮さんにぷーすけの世話を依頼しているとのことだった。

調子のいいときは、間宮さんと一緒に公園でぷーすけの散歩に同行することもある。

その調子のいい時に、私は公園で二人と出会ったんだ。

少しずつ色んな謎が解けていく。


「それでね、私来週アメリカに渡って本格的に心臓の治療をすることになったの」

「そうなんですか？」

「今までは間宮さんが出張に行くときは、私やうちの母がぷーすけを世話していたのだけどそれができなくなるの」

私はぷーすけの頭を撫でながら、不安な気持ちで間宮さんに顔を向ける。

間宮さんも軽くため息をつき、私の目を見つめ返した。

「そうなんだ。それでタイミングが悪いことに僕も来週から二週間ほどイタリアに出張に出なくちゃいけなくなってね」

「じゃ、ぷーすけは？」





< 59 / 233 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop