甘くてやさしくて泣きたくなる～ちゃんと恋したい

安友さんはところどころシルバーを残した長い美しい黒髪を後ろに束ねていて、生成りのサテン生地シャツに黒に白の細かい水玉のロングスカートを履いている。

年齢ははっきりとはわからないけれど、すっきりとしたその姿はとてもあか抜けていてかっこいい。何か特別なお仕事でもされているんだろうか。

「このお家には一人でお住まいですか？」

聞いてもいいかどうか迷いながら尋ねると、安友さんは「ええ」と頷き微笑んだ。

「主人はもう他界していてね。ここであの庭にいたドーベルマンのジョンと暮らしてるの」

あの賢い犬はジョンっていうんだ。

「とても大きなおうちですよね」

「そうね、一人で住むにはもったいないくらい大きいわ。でも、主人との思い出がいっぱい詰まったこの家はまだ売りたくなくてね」

余計なことを言ってしまったと後悔する。

「でも、こんなことがあったんじゃ、一人で住むのもそろそろ終わりにした方がいいかしら」

安友さんはペロッと舌を出してちゃめっけたっぷりの表情をした。

こんな素敵な安友さんはきっと今は亡きご主人にとても愛されていたんだろうと感じていた。

その時ふいに尋ねられる。

「ところで、凛さんはパーソナル・サポートの間宮社長とはどういったご関係？」