勇者のための聖女

「私は勇者様に国民の皆様からの言葉を伝えているのです。面倒な事などと仰らないでください。」

「へー?その"国民の皆様"とやらに生け贄にされた可哀想な聖女様は今日も生き残った勇者にご慈悲をくださるわけか。ご苦労なことだな。」

ベッドに腰をかけている勇者は黒髪をかき上げながら気だるげだ。

黄金の瞳は普段ならどんな女性をも虜にしてしまうような色気を放っているが、今は殺気を帯びている。

「そのような言い方はしないとこの前約束して下さったのをお忘れですか。私は生け贄ではありませんし、勇者様がお強いのは世界中で周知されている事です。」

「そうだったか?この前ねぇ…。あぁ、そう言えばそんな事も言ったかな。ミーナがどろどろのぐちゃぐちゃになっても意識が保てたらって約束だったはずだが?」

勇者はにやりと口角を上げると聖女の柔らかい腕をゆっくりと引き寄せベッドへ誘う。

聖女が勇者を押し倒すような体勢になったことでまるで自分から誘っているかのような体勢と、数日前の恥ずかしい記憶を嫌でも思い出してしまい聖女は白い肌を真っ赤に染めた。

「そんな条件を含めた約束はしていません!私は私の使命を全うしているだけです。勇者様が出来る限り体を痛めること無く世界を救えるように加護を授けるための行為であって、そんな…そんな…私は……っ」


羞恥で今にも泣き出してしまいそうな聖女に勇者の加虐心がくすぐられる。


「じゃあその使命を全うしてもらうとするか。聖女様、お好きにどうぞ?」


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