桜の木に寄り添う

帰りたくない

ちゃんとお店の事だけを……考える。
　それが今の私には最優先の事だから。

　迷って悩んで、私が出した答えを理解してもらおうとは思ってない。
　ただ、理解してくれる日が来るって信じてる。

　今このまま、中途半端な気持ちで進んでもきっと何もうまくいかない。

　沢山悩んで決めた答えは、必ず道は開く。
　今まで起きた沢山の事は私にはマイナスな事なんて一度もなかったんだ。

「 上重さん、今は帰りたくないんです 」

　私は上重さんにはっきりと伝えた。
　上重さんは、心配そうな顔をせず笑顔を見せてくれた。

　私はお店に置いておいた沢山のアロマオイルや雑貨を広げ始めた。

「 上重さん、マッサージしませんか？ 」

「 なっちゃんのマッサージ、久しぶりだわ。嬉しい 」

　上重さんは、私の目の前に座り手を差し伸べる。

　癒しをくれるアロマオイルのほのかな香りと共に私はマッサージを始めた。

　事故に遭って落ち込んでいた時のことを思い出す。
　ずっとやってきた唯一の仕事。

　私にはこの仕事しかないし、出来ることならずっと続けていきたい。
　上重さんや店長のおかげで、やっとここまで来れたんだ。
　お世話になった人達の思いを無駄にするわけにはいかないんだ。

「 ねぇ、なっちゃん。私ね生きがいをなっちゃんから貰ってるのよ。でもね、今のなっちゃん……辛そうだから私も見てて辛いの 」

「 上重さんには、何も隠せないなぁ 」

「 なっちゃんが分かりやすいだけよ。辛かったり悩んだ時……誰かを頼っていいんじゃない？ 」

「 え？ 」

「 辛そうにしてても幸せにはなれないよ！甘えたりするのも嫌って思うかもしれない……けど話せる人がいるのなら話すべきなのよ 」

　その上重さんの言葉を聞いて……私は涙が止まらなくなってしまった。
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