桜の木に寄り添う

始まり

しばらく病院と仕事と家とを行ったりきたりの生活が続いた。


 あれから、病状は悪化してしまい、お母さんは家に戻ることはなかった……
 帰らぬ人になってしまった。

 覚悟していた分、悲しくて寂しかったけど涙はあまり出なかった。
 本当に悲しい時、人って涙が出ないのかもしれない。
 あかりちゃんのお母さんと同じところ。空に……いるのかな。
 あかりちゃんと一緒に、またシャボン玉を吹いたら、届くかな。


 私は、やっぱり一人だと色々大変で、コウちゃんと一緒に住むことになった。

 あれ以来、桜のポストにも行っていない。

 お店の事もあり、忙しいからだ。でも、それくらいが私にはちょうどいいのかもしれない。

 家は引き払うことができず、コウちゃんにきてもらうことに。

 ーーーーーーコウちゃん引っ越し当日。

「 なつ、私の部屋ここでいい?」

「 うん、そのつもりで片づけといたよ!」

「 ありがとうね。やっぱり一人は耐えられないから 」

「 何言ってんの!助け合いだよ。お互いね!」

「 はーい 」

 ピンポーン

「 誰?」

 あ、よっちゃん……?
 後ろにも……。

「 えっ!?」

「 引っ越しは男手が必要だろ?ヒロキも入れ!」

 ずかずかと二人が入ってきた。

 するとよっちゃんが言った。

「 ヒロキ、今住むとこ探してるらしい。ここにしばらく置いてやってよ。部屋あまってるし 」

 うわ。嘘でしょ。コウちゃん断ってよ。

「 私はいいよ。なつは?」

「 えっ?う、うん。」

「 じゃ決まりね!」

「 よかったな。ヒロキ!」

 ヒロキくんはクールな表情で顔色一つ変えずに。

 もともと、私の憧れだし気づかれてないだろうし。

 ただ安西さんにもしバレたら。
 次は修羅場になりそうな気がする。

 私達3人のシェアハウスの始まりであった。

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