桜の木に寄り添う

自己嫌悪

 俺のせい。
 俺のせいで彼女を苦しめてしまった。

 助けるはずがなぜ、こんなことに。

 ただ守りたかった。
 ただただ、守りたかっただけなのに。

 アイツの言葉を思い出した。

「あなただけ幸せにはさせない。」

 こういう事だったのか。悲しい気持ちになった。
 そんな事でしか人と繋がっていられない。
 俺がそう変えてしまったのか。

 でも、なつみを苦しめてしまった。

 影でコソコソとやりやがって。

 胸がしめつけられる思いで一杯だった。

 なつみ、帰って来てくれるよな?

 俺は、あの桜の木の家も桜のポストも守る。
 お前が帰って来るまで、待ってるつもりでいるよ。好きだよ。
 自分の気持ちにもっと早く気付くべきだった。

 あの時と同じだ。
 高校の時、なつみを見かけたのだ。
 あの桜の木の下で。
 でも声をかける事が出来なかった。

 今更、言えるわけがないよな。

 あの女。俺がなんとかしないと。

 黙ってるわけにはいかない。

 どうしていいか今は、分からない。

 ヒロキは自己嫌悪に陥ってしまった。

 カフェの中で頭を抱えて、悩んでいた。

 その時、携帯に着信があった。
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