桜の木に寄り添う

変わらないはずの場所

車で家に向かっている途中……

 私は、色んな想いを抱えながら大人も子供も生きていることを改めて、痛感した。

 自分だけが、事故に遭い車椅子の生活になってしまって不幸だとか、そう頭の片隅で思っていた事があかりちゃんと出会って、私も自分に対する想いが変わってきているのを感じていた。

 海岸から、桜の木があるあの家はそんなに遠くない。
 こうちゃんは、海にあかりちゃんが一人で来ていたなんて思ってもいなかったのだろう。
 自分が海は、今は見たくないと言っていたのをあかりちゃんが知っていたから……

 でも見つかって本当に良かった。
 何もなくて本当に良かったよ。

 少し走った所で、車が止まった。

「 着いたよ 」

 そうヒロキくんが、私とあかりちゃんに言った。
 玄関の外を見ると、こうちゃん達みんなが、心配そうな顔をして出迎えていた。

 バタバタと慌てたように、あかりちゃんは車を出た。

「 ごめんなさい 」

 泣きじゃくるあかりちゃんを、こうちゃんは何も言わずに、そっと抱き寄せた。

「 心配したんだから! 」

 少し強めの口調でこうちゃんは、言った。
 こうちゃんの目には大粒の涙が光っていた。

 みんなは、静かに見守り涙していた。

 私は、少し遅れて車から降りその場を離れた。

 キーキーと車椅子を走らせて、桜の木のそばへ向かった。

 ……まだあった。

 ヒロキくんと一緒に立てた、あの桜のポスト。
 少し色褪せた気はするけれど何も変わっていなかった。

 落ちつくなぁ。桜の木……

 生まれ育ったこの場所は、やっぱり落ち着く。

「 おかえり 」

 後ろから声をかけてきたのは、ヒロキくんだった。

「 ただいま 」

 二人とも照れたように微笑んだ。

 いつもと変わらないこの場所は、私達がまた揃うのを待っていてくれているようにも思えた。
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