桜の木に寄り添う

キャンドル

食事も終わり、私はお母さんの部屋があった場所へ移動する。
 懐かしい、お母さんの部屋。
 この部屋は、あの頃と何も変わっていない。
 私の気持ちを察して、そのままにしてくれていた。
 カチッ
 お母さんが好きだった、アロマキャンドルをつけた。
 いい香り……

 そしてふと時々、思う事がある……
 人の気持ちは、わかるようでわからない。
 言葉に表す事で、相手にやっと伝わる。

 それでもその人の事をわかろうとする気持ちがないと、分からないままだと思う。

 私は、あかりちゃんの事を分かりたいし、頼れるお姉さんでいたいと、思っている。
 だから、余計に心配になっているのかもしれない。


 ん?
 携帯がなっている……

「 もしもし 」

 電話の相手は、上重さんだった。

「 なつみちゃん?明日お店に来てくれる?見てほしいのよ 」

「 はい、わかりました。少し遅くなりますが、向かいます 」

「 よろしくね! 」

 上重さんは、本当に良くしてくれる人。
 楽しみにしているお店の内装も、全て任せっきりにしてしまっている。

 私は、これからもっと強く生きていかなければならない。
 お母さん……私は、きっともっと強くなるよ!
 だから、見ていてね?楽しみにしていてね。

 これから、夢だったお店の店長としてやっていかなければならない。

 たくさんの人を癒し、笑顔にしていく仕事を選んだのだから。

 コンコン

「 なっちゃん、入っていい? 」

 あかりちゃんが、扉の外から顔を覗かせた。

「 うん、いいよ。もう寝よっか? 」

「 ううん、まだいいの。話したいなと思って…… 」

 そう言いながら、あかりちゃんは部屋の中に入った。
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