桜の木に寄り添う

秘密の場所

「 なっちゃん、キャンディ食べてみて〜 」

「 可愛いから後でがいいな 」

「 まだあるから大丈夫だから!食べてみて〜 」

 そう言われて、私はポケットから一粒のキャンディを取り出した。

「 ん? 」

「 桜の味するでしょ!? 」

「 うん、美味しいね! 」

 そのあかりちゃんがくれた桜の花びらの形をしたキャンディは、ほのかに甘く、ふんわりと優しい桜の味がする……

 私があの桜の木から離れてしまったから。
 きっと寂しくないように、このキャンディをくれたんだね。
 とっても、とっても……美味しいよ。
 ありがとう……あかりちゃん。

「 ねぇ、あかりちゃん? 」

「 な〜に?なっちゃん! 」

「 どこに向かってるのかな? 」

「 きっと、もうすぐ着くから待っててね! 」

 あかりちゃんが、どこに一緒に行きたいんだろう。
 あまり来たことがない道をぐんぐん進んでいく。

 木が生い茂っていて、本当にここなのかな?と思ってしまうくらい何も無い場所だ。

 ……でも、空気が少し違うような自然の香りがする。
 両脇には木があり、すごく細くて狭い道だ。

 少しの間私達は、無言になる。
 私は、何も考えずにこの空気を感じるように目を閉じた……

 心地いい場所……

 都会では、全く感じることの出来ない空気感。

 あかりちゃんがくれた桜の味のキャンディがより一層、雰囲気を出してくれている。

「 なっちゃん、もうすぐ着くよ! 」

 あかりちゃんがそう言葉を発し、私は……目を開ける。

 あんなに細くて狭い道だったのに、急に現れたような開けた場所だ。
 そこには、見た事の無いくらいのたくさんの花が咲いている……

「 わぁ、すごい 」

「 すごいでしょ!私のお母さんお花がすごく好きだったんだって。もし生きていたら……この場所教えてあげたかったな。私となっちゃんの秘密の場所だよ! 」

 そこに咲いているたくさんの花は、私達を歓迎してくれているように感じた。

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