桜の木に寄り添う

一枚の絵

 私は今まで聞けなかった事を、思いきって聞いてみようと思った。

「 ヒロキくん、この町にずっといる? 」

「 俺……実はやりたい事があるんだ。なつみと再会して、今まで気づけなかった事に気づいたんだ」

「 どういう事? 」

「 家族に話す事もあるから東京に近いうち行く。その時に詳しく話すよ 」

「 ちょっと行ってくる…… 」

 何か思い出した様な表情で、外に出ていった。

 トントン

「 なつ!出発だよ!リエもよっちゃんももう車の方へ行ってるよ 」

「はーい 」

 たくさんのことは聞けなかったけど、東京に来るって言ってたから、その時にもう一度話そうと思った。
 そして私は、あの家のことを聞く事が出来なかった。

 部屋を出て車の方へ向かう。

 ヒロキくん……どこへ行ったのだろう。

 リエとよっちゃんとあかりちゃんは、もう車の中で待っているようだった。

「 よいしょっと! 」

 こうちゃんは、私を抱えられ車に乗った。

「 リエ、ヒロキくん見た?急にいなくなっちゃって 」

「 外に出ていくのは見たけど、まだ戻ってないみたいだね 」

「 そうなんだ 」

 車が走り出しそうになった瞬間、車の窓をドンドンとヒロキくんが強く叩いた。
 私は、窓を開け訪ねる。

「 どうしたの? 」

「 良かった、間に合った。はい、コレ! 」

 私は渡されたモノを手に取った。

「 ヒロキも行く? 」

 こうちゃんが、ヒロキくんに聞いてみたがヒロキくんは、首を横に振りこう言った。

「 ごめん、これから行く所がある。じゃ、気をつけて 」

 いつもと同じクールな表情で、スタスタと家に向かってしまった。車が走り出す。

 私がヒロキくんに渡されたモノ。

 それは……一枚の絵だった。

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