Fake!!(フェイク)~漆黒の魔導師と呪われた乙女の物語~
「スルトの恋人、魔女ヒルデだ。」

ヒルデの胸の上に、封印の剣を静かに置くとレオルドは暫しの間押し黙り、ジッと遺骸を見つめていた。
彼のサファイアのような瞳には彼女に対する深い敬意のこもった穏やかな光が満ちていた。


「この神殿は…彼らが生きていた時代からこの場所に建っていた。ここには、かつて一つの胴から百の頭を生やした恐ろしい魔物…ヒュドラが封印されていたんだ。そいつが突然覚醒し国に災いを広めた。驚いた国王は息子である第一王子スルトに退治を命じたのさ。」

「…。」

「その頃スルトは一人の魔女と恋に落ちていた。それが、ここに眠るヒルデだ…彼は彼女との結婚の許可を得るために、強力な魔力の持ち主だったヒルデを伴い此処へ赴き、見事にヒュドラを倒した。だが、その戦いの最中、ヒルデは死んだ。スルトは失意の元山を下り、国王に勝利を報告した後神殿の前で自害して果てた。」

「ヒルデの死が…スルトを勝利に導いた…それって…。」


エドガーの問いに、レオルドは苦渋の表情を浮かべ、深く頷いた。
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