崩れたと思っていた青春の先は
「あ、そうなんですか…」

「うん。じゃあ、今日は風雅くんに聞きたいことがあります」

宮内先輩は、俺に微笑みかけた。俺は「はい」と宮内先輩を見つめる。

「風雅くんが一番行ってみたい国は?」

「俺が一番行って見たい国…?どこだろ…」

俺は、宮内先輩の問いかけに悩んだ。俺は地理が苦手なのだ。

「…イタリアです」

「イタリアと言えば、ヨーロッパにあるブーツの形をした国だよね。首都はローマ!」

笹井先輩が目を輝かせながら言った。俺は、ぼんやりとしかイタリアについて知らない。

「コロッセオとか有名だよね!」

「コ、コロッセオ…?」

俺が首を傾げると、皆は「え?知らないの?」と口を揃えて言った。

「名前だけは聞いたことあります…俺、テレビをあまり見ないので…それに、俺は地理とか世界のことが苦手なんです」

「…そうなんだ。じゃあ、僕たちと少しずつで良いから勉強してく?」

石丸先輩が俺に向かって微笑む。俺は「考えておきます」と曖昧に答えた。

俺は、両親の異常な期待のせいで高校に入った。両親は、高校ならどこでも良いらしく、俺の学力に合わせてここの高校を選んだのだ。両親には、どこかの部活に入るようにも言われていた。

しかし、俺は両親には逆らわない。両親に怒られるのが怖いから。小さい頃から両親のケンカを見ていた僕は、怒声が苦手なのだ。
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