あふれる笑顔
「いらっしゃいませ。」

威勢の良い声に迎えられて

チェーン店とは違う

オリジナル料理を出してくれるという店の暖簾をくぐった。

「2名様ですね!
どうぞ。」

すぐに席に案内され

つき出しの、竹の子の木の芽和えが運ばれてきた。

『ご注文をお願いします。』

店員の言葉に

「私、生ビール!」と速答の咲。

そうとう我慢をしていたらしい。

「俺も一緒で。
後は、メニューを見て呼びます。」

注文して来たビールで乾杯する。

「ホントにこんなんで良かったのか?
俺、一応お金有るんだけど。」

今までつき合った女は、自分から祝って欲しい事を催促していた。

比べるつもりは全くないが…………

家庭環境がここまで影響するのかと、ちょっと驚いた。

「十分だよ。
生まれてきたことを、祝福されただけで幸せだもん。
さっき、親たちと咲々から『おめでとう』ってメールがきた。
親に言ってもらったのって…………
何年ぶりだろう。
圭ちゃんと出会ってから幸せいっぱい貰ったよ!」

「可愛いことを………。
ここがホテルだったら、ヤバかった。
後で覚えとけよ。」

ニヤッと笑うと

「…………………。」

黙った。

可愛いやつ。
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