あふれる笑顔
そういえば、旅行なんていつ以来だろう?

子供の頃はよく行っていたが………

ささを連れて家を出てからは、仕事に追われて行ってない。

ここ10年は仕事も落ち着き、つき合った彼女の誕生日に

催促されて行くこともあったが………

自分から調べて行こうと思ったのは…………記憶にない。

「電車って、良いねぇ。
運転してないから
圭ちゃんとゆっくり時間が過ごせる。
車だと『あれ見て!』って言いにくいもん。
海がキレイだよ!」

咲の言葉に『そうか』と納得がいった。

今まで積極的に旅行をしなかったのは……

プライベートの時間に、二人でじっくり過ごすことを

拒んでいたのかもしれない。

相手には、申し訳ないが………

一緒に居たいと思える相手ではなかったんだろう。

咲とは……………

この時間を大切にしたいと思うくらいだから…………

結婚を考えれたんだと思う。

「ねぇ、圭ちゃん。
聞いてる?
どんどん田舎になっていってるけど……間違ってない??」

いつの間にか自分の考えに没頭していたようで………

咲に心配をかけてしまった。

「線路が一本だから、間違えないだろう。
いいよなぁ、こんな時間。
咲…………ありがとな。」

素直な俺の言葉にキョトンとして

それから嬉しそうに腕に抱きついてきた。

手を出すのかどうかなんて………どうでもいい。

せっかくの旅行を楽しまないと。

咲とゆっくり話したい…………。
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