あふれる笑顔
カラン、コロン。

いつもより、幾分もの悲しく聞こえるカウベル。

一瞬顔を上げたささに、顎で後ろを指し示される。

バックヤードにいるんだろう。

「サンキュウ。」

簡単に礼を言って通りすぎようとした俺の肩を掴んで

「ちょっと。」と……外を促す。

一刻も早く、咲の顔を見たい俺は無視して進もうとするが

ささの強い引き止めに、入ることは叶わなかった。

渋々ささについて表に出ると……………

強烈なパンチと共に

「このアホが!!」と

普段聞くことのない

ささの俺への暴言を聞いた。

………………………………………………………………………。

お前達が

プールに行くとか、ふざけた事を言うのが悪いんだろう!

そう言ってやりたいが

そんな女々しいヤキモチを、妬いた自分が恥ずかしくて

文句を言うことが出来ない。

「圭哉。
……………兄貴…………。
咲が大切なら………
もう少し大事にしてやって…………。」

はぁ~っ?!

大切にしてるだろう??

お前に何が分かる!!

睨む俺に

「咲の話しを…………聞いてやって。
アイツ………………
兄貴が思うより…………………子供だから。
兄貴に追いつこうと頑張って背伸びしてるけど…………
ホントに……………子供なんだよ。
良い子の仮面を被って
理解ある女でいようとしてるけど………
恋愛も家族も友達も…………
何も経験してないんだよ。
プールも…………俺と行きたい訳じゃない。
自分に自信が持てないから…………俺について行って欲しいと。
兄貴に手を出されなかったのは…………
自分に魅力がないからだと。
兄貴の今までの相手みたいになりたいから………教えてくれって。
言ってる事は、馬鹿馬鹿しいし
何を悩んでるんだって…………笑いそうになるけど
咲は…………大真面目で一生懸命なんだ。
兄貴に好かれたいと、必死で…………
可愛くて愛しい。
ホントは、こんな事…………俺が伝える事じゃないよな。
二人でゆっくり話して欲しい。
だから………旅行に行かせた。
なのに帰って来て直ぐこれじゃあ……………
正直、二人の将来が不安だよ。
俺を救ってくれた兄貴。
今度は咲を、救ってやってよ。」
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