あふれる笑顔
「その日のことを………どれくらい覚えてる?」

俺の質問に遠い目をして

「う~ん…………。
ハッキリ覚えているような…………あやふやなような。
あの日私は、付き合って3ヶ月になる彼氏と
デートに行ったの。
彼は、4歳年上の高校二年生。
中学一年生の私からしたら、とっても大人で頼りになる人だった。
だから信じて、一人住まいをしている事を話したんだ。
お祭りの帰りに『もう少し一緒に居たい』って言ったら
『だったら咲の家に行きたい』って言われたの。
幼かった私は
そう言った時の男の子の反応なんて想像も出来なくて
喜んで家に上げて…………そこからは…………」

「うん、分かった。
もういいよ。」

辛そうな咲を止めると

「大丈夫だから……聞いてくれる?」と言われた。

頷いて頭を撫でる俺に、安心するように

「家に上がって玄関の戸を閉めてからは
引きずられるようにベットに連れて行かれ
分からない内に裸にされて………
『痛い!』『怖い』『止めて!』って
ただただ…………泣いていた。
事が済んだら…………
『誘ったお前が悪いんだからな!』って言われて。
私が悪かったんだって言われると
同じ行動をすると、また怖い目にあうと思ったの。
それからは………
家に上がったり上げたりしないように気をつけた。
だからかなぁ?
彼氏はできるけど………続いた事がないの。
側にいて欲しいし、深く繋がりたいのに
怖くて踏み込めないから…………
信じてないように思われるみたい。
圭ちゃんに出会ってからは
恋をしているって気づけない程
自然に恋をしたんだ。
直ぐに『付き合いたい』とかじゃなくて
ちょっとずつ………
空気を吸うみたいに、ゆっくり好きになってたの。
自分から
『エッチしてでも側に居たい』って思う人も初めてで………
あれだけ怖かったのに??って驚いたけど
それならエッチしようって心が決まったの。
なのにいざとなったら
『初めてじゃない!』って知られるのが怖くて。
嫌われたら?…………って不安になった。
その内
『手を出さないのは魅力がないから?』って想像すると
子供だから??
圭ちゃんの今までの彼女はどんな人?って
どんどん不安が増えていって。
もう、何に不安を持ってたのかも分からなくなってきたの。
後はここ最近の様子です。
ただただ……怖かった。
『結婚しよう』って言われて
あれ程望んでいた幸せが目の前にあるのに……
素直に喜べなくて……
自分で自分が嫌になった。
ねぇ、圭ちゃん。
家庭の温かさすら知らない人間が
圭ちゃんの隣に立てるのかなぁ?
自分の幸せの為に
大好きな人を困らせる事になるかもしれないよ。
圭ちゃんとずっと一緒に居たい。
幸せになりたい。
けど………
自信が持てないの。」
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