あふれる笑顔
咲の本音を聞いた。

不安も怖さも…………

幸せになりたい気持ちも。

隣に立つ不安を与えてしまったのは…………俺だよなぁ。

仕事を辞めて俺を支えて欲しいって。

親父やお袋を納得させる為に考えた事だけど

詳しく話してないのに……支えろって……

メチャクチャ不安だよな。

おまけに、結婚して家庭の事も増えるって……

一人で生きてきた咲には、スッゴいプレッシャーだよなぁ。

「やっぱり俺が『ごめん』だな。
年上とか関係なく…………
考えが甘かった。」

「えっ!?
結婚………やめちゃうの??」

甘かったという言葉が

俺が結婚を考えた事を、後悔しているととったみたいだ。

「ばぁ~か。
どんなに泣かれたって
結婚をやめてなんてやらないよ。
俺が言った『甘かった』は…………。
家族や仕事の話をせずに
『幼稚園を辞めて手伝って欲しい』と言ったことだ。
あっけらかんと『いいよ』と言ってくれたから
勝手に大丈夫だと判断したけど……。
何も聞かされずに手伝えって言われたら
誰だって不安だよなって。
仕事の事は、ささと相談するから
もうちょっと待って欲しい。
アイツにも手伝って欲しいからな。
ただ、お袋の事もあるから………慎重に考えてみる。」

家の事を他人に話したのって、初めてかもしれない。

会社経営なんてしていたら

お家騒動なんて、格好の餌食だから。

足の引っ張りあいの世界。

弱味を見せる訳にはいかなかった。

ささを連れ出してからは、家を継ぐなんて

ありえないと思っていたけど。

咲を手に入れる為には、親の納得が必要だ。

……………だから俺は焦ってた。

咲を手に入れる事ばかり考えて

咲の気持ちが、置いてきぼりになっていたのに。
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