身ごもり政略結婚
それから二日後の土曜日。
検査の数値が上向いてきたこともあり、退院してマンションに戻った。
入院中、大雅さんは宣言通り残業をすることなく仕事を切り上げて、足しげく通ってくれたので本当に心強かった。
ただ、洗いざらい不安を吐き出せたかと言えば、そうでもない。
仕事が満足にできないことの焦りや、男の子を産まなければならないというプレッシャーについてはまだ。
仕事の件は焦っても仕方がないとわかっている。
しかし、千歳を強く推してくれた彼の役に立ちたいという気持ちがくすぶったまま残っていた。
そして、男の子を望まれているのが苦しいとは、一番言い出しにくい。
そう急かした彼のお義母さまの悪口を言うようでいたたまれないのだ。
「結衣。ボディソープの新しいのってどこにあるっけ?」
「洗面台の下の右のほうです。私、やりま――」
「寝てなさい」