身ごもり政略結婚
笑顔でベッドの私に命令を下す大雅さんは、朝からバスルームの掃除に精を出している。
けれど私は、彼の袖口が思いきり濡れているのが気になって仕方ない。
「ハウスキーパーをお願いしたほうがいいですよね」
あまり気乗りしないが、仕事で走り回る彼に負担をかけたくない。
「いや。この家は俺と結衣の大切な場所なんだ。やっぱり、知らない人を入れたくない。もう終わるから」
慌ただしくベッドルームから出ていった彼の背中を見ながら、頬が緩んだ。
だって……『俺と結衣の大切な場所』って。
私は彼の特別な存在になれていると言われた気がした。