身ごもり政略結婚

南雲先生に、結衣のいないところで『出産は命がけなんですよ。お父さんが寄りそってあげてくださいね』と念を押された。

流産などの可能性があることは承知していたが、母体の危険を深刻に考えたことがなかったので目からうろこだった。


けれども、もともと細い結衣の腕がさらに細くなり、骨が浮き出るまでになりながら『大丈夫』を繰り返して子供を守り続けてくれた彼女を見て、『命がけ』というのが大げさではないと感じた。


ベッドに座って彼女の頬にかかる髪をよけてやると、うれしそうに目を細める。

バカな意地を張っていないで、最初からもっと優しくしてやればよかった。

でも、千歳を守るためだけのために結婚を選択しただろう彼女に、俺を愛してほしいとは簡単に言えない。

先にけん制したのは俺なのに都合がよすぎる。


結衣の目がトロンとしてきた。
それなのに一生懸命まぶたを持ち上げようとするのは、俺との時間を楽しんでいるからだと思いたい。
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