身ごもり政略結婚
お父さんには店以外のことで心配をかけたくないと、倒れたことですら俺に秘密にしておいてほしいと頼んできたくらいだし、お父さんもつわりの相談なんてされても俺以上に困るはずだ。
だから?
どうして俺は政略結婚なんていう選択をしたのだろう。
真正面から彼女と向き合い、恋に落ちていれば……こんなすれ違いをせずにすんだかもしれないのに。
もちろん、ああして強引に結婚を迫らなければ、彼女は俺を受け入れてくれなかっただろうけど。
「ごめん。この体勢つらい?」
結衣に拒否されているのかもしれないと気づいた俺は、〝体勢〟のせいにして離れた。
彼女の口から『離れてほしい』と言われるのが怖かったからだ。
「い、いえっ」
キョロキョロと目を泳がせる彼女は、俺と視線をあわせようとはしない。
「元気になったらうまいものたくさん食べような。なにが食べたい?」