身ごもり政略結婚
そして俺は、それを笑顔で頬張る結衣の姿がたまらなく好きだ。
幼いころから和菓子に囲まれていた彼女だけれど、ケーキも焼き菓子も本当においしそうに食べる。
その様子は、俺が必死に育ててきたエール・ダンジュを肯定されているようで、くすぐったかった。
またあの姿を見たい。
「そんなのはお安い御用だ。限定品もこっそり手に入れてくるよ」
「うれしい」
笑みを浮かべる彼女は、俺の腕を握る。
無意識なのかもしれないが、それにドキッとした。
もう何度も体を交えているというのに、彼女のほうから俺に手を伸ばしてくれたことがうれしかったのだ。
「少し休もう。体調が悪くなったらすぐに知らせるんだぞ」
「はい」
彼女はそのまま目を閉じた。
そして、それから十分ほどすると、眠りに落ちたようだ。
「苦しくなくてよかった」