身ごもり政略結婚
でも、俺は結衣との子が欲しい。
彼女の妊娠を知ったとき、言い知れない喜びがこみ上げてきて、彼女もお腹に宿った命も愛おしくてたまらなかった。
会社の後継者なんてどうにでもなる。
そんなことより……俺たちふたりの間に宿った小さな命を大切に育てていきたい。
「結衣」
小さな声で彼女の名を口にして、こっそり額にキスをする。
「好き、だよ」
こうして聞いていないときにしか言えないのが歯がゆい。
でも、自分が招いた結果だ。
俺はそれから彼女の手を握り、自分も目を閉じた。