身ごもり政略結婚

でも、俺は結衣との子が欲しい。

彼女の妊娠を知ったとき、言い知れない喜びがこみ上げてきて、彼女もお腹に宿った命も愛おしくてたまらなかった。

会社の後継者なんてどうにでもなる。
そんなことより……俺たちふたりの間に宿った小さな命を大切に育てていきたい。


「結衣」


小さな声で彼女の名を口にして、こっそり額にキスをする。


「好き、だよ」


こうして聞いていないときにしか言えないのが歯がゆい。

でも、自分が招いた結果だ。


俺はそれから彼女の手を握り、自分も目を閉じた。
< 152 / 322 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop