身ごもり政略結婚
「おかえりなさい」
玄関に出迎えにも行けずソファから起き上がろうとすると、彼は近くに来て止める。
「体調悪い?」
「いつもの感じですから、大丈夫です」
と言いつつ、本当は心が悲鳴を上げていた。
次の検診でもし女の子だと判明したら、大雅さんや彼のご両親はなんと言うだろう。
落胆するだろうか。
「そっか。今日、検診どうだった?」
「はい。赤ちゃん、順調でした。あっ、エコーの写真があるんです」
私は必死に笑顔を作った。笑っていないと不安で泣いてしまいそうだ。
近くに置いてあったバッグから写真を取り出して渡すと、彼は目を大きくして見入っている。
「すごいな。もうちゃんと人の形なんだもんな」
「でも、まだ六センチくらいらしいですよ」
「六センチ?」
彼は「こんなもんだろ?」と親指と人差し指で大きさを表している。
「はい。でも、心臓も肝臓もできてるって先生が」
「はー、生命の神秘ってやつだな。元気に産まれてこいよ」