身ごもり政略結婚
私のお腹をさする大雅さんは、声をかけている。
最近は彼も父親の顔をする瞬間があって、私としてはうれしい。
でも、『女の子でも誕生を喜んでくれますか?』とはどうしても聞けない。
彼が一瞬でも顔をゆがめたら、この先耐えられないんじゃないかと心配になった。
「そういえば来週、アルカンシエルの上層部に時間を作ってもらって、千歳の和菓子を売り込めることになったよ。その日にサンプルをいくつかそろえてもらえるようにお父さんにお願いするつもりだ」
「それ、重要な機会ですよね」
「そうだね。担当者との折衝は続けているけど、社長も忙しい人だから、何度もチャンスはもらえない」
私がデザインを考えられないせいで、最近は新作が並ばない。
いわゆる昔からある伝統の和菓子の形ばかり。
それはそれで味も見た目も胸を張れるが、アルカンシエルはバリエーションの多さを求めている。
それなら、新作があったほうがいい。