身ごもり政略結婚

「四カ月。つわりがひどくて、連絡できなかった。ごめんね」

『そんなこといいのよ。わー、結衣もママになるのか。なんか実感湧かないよ』


彼女にそう言われて、私は無意識にお腹に触れていた。

私、ちゃんとママになれるかな。

つわりが徐々に軽くなってきた最近は、出産や育児に関する本を読むことも多くなり、無事に出産までこぎつけられるかとか、そのあと子育てをきちんとできるのかとか、考え込んでしまうこともある。


『結衣?』
「あぁ、ごめん。私もまだ実感が湧かないの。ね、真紀なら成功するよ。応援してる。時々連絡ちょうだい?」
『了解』


彼女は仕事の合間だったらしく、それで電話を終えた。


「輝いてるね、真紀」


千歳でバリバリ働いていた頃は、私も真紀に負けていないつもりだった。

けれど、最近はため息ばかりついていて、到底真紀と肩を並べられない。


赤ちゃんがどんどん愛おしくなる一方で、そんなジレンマが苦しくもあった。
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