身ごもり政略結婚
倒れてからめっきり優しくなった大雅さんは、一緒に注文したミートパイを口に運んでいる。
本当はこの店のミディアムレアに焼いた牛ホホ肉が好きなようだが、私の前では決して食べない。
妊婦は生ものに気をつけないといけないからのようだけど、まさか私にあわせて自制してくれるとは。
彼は食べたって問題ないのに。
けれどそんな心遣いも、つらい時期を一緒に乗り越えようとしてくれているのかな?と感じて、本当はうれしい。
結婚してから、ずっと大雅さんとの間に見えない大きな溝があると思っていたのに、妊娠を機にその溝は狭くなりつつある。
こうやって夫婦の絆を深めていけばいいのかもしれないと思う一方で、忙しい彼に私の世話までさせてしまい、迷惑をかけているだけでなにもできない自分が嫌になる。
食事だってこうして頼んでばかりなのでそろそろ作らなくてはと思っても、ご飯の炊ける匂いがつらくて挫折してしまう。