身ごもり政略結婚
結局、自分のリクエストした料理でさえ三分の一くらいしか食べられなかった私は、思い通りにならない体にもイライラしていた。
彼がお風呂に行ってしまうと、リビングのソファでスケッチブックを手にする。
そして何枚も新作を描いてみたが、どれもしっくりこない。
「描けなくなっちゃった」
千歳で働いている頃はいくらでもアイデアが湧いてきたのに、まったくダメ。
私はスケッチブックの一枚を破り取り、クチャッと両手で握りつぶした。
「結衣」
そのときドアが開き、大雅さんが入ってくる。
見られた……。
動揺していると、彼は隣に座って私の手から丸めたスケッチを奪って広げた。
「見ないでください!」
慌てて取り返そうとしたけれど、返してくれない。
「焦らなくていい」
「そんなこと言ったって、私はなにもできないんです。店にも行けない、大雅さんの食事も作れない、家事も頼ってばかり……。どうしたらいいの?」
悔しくて涙があふれてくる。