身ごもり政略結婚
これで赤ちゃんが女の子だったら……。
私は大雅さんの妻になる必要なんてなかったじゃない。
真紀の活躍を耳にしたばかりなのもあるのか、感情の爆発を抑えられない。
「結衣、落ち着いて」
大雅さんはいつものトーンで私の名を呼び、抱きしめてくる。
彼との距離が少しずつ縮まっているように感じるのに、嫌われてしまう。
ううん、追い出されるかも。
私は彼の肩に顔をうずめて、何度も首を振っていた。
「なにも心配いらない。結衣は今、マタニティブルー気味なんだよ」
「え……」
そんなこと思いもしなかったので、唖然とした。
「結衣の場合、つわりがひどくて急に生活環境が変わってしまった。無意識かもしれないけど、多分これからどうなってしまうのか不安でいっぱいなんだ」
不安は常にある。
自分では解消できないほど大きな不安が。
「イライラするのも涙が出るのも、気分の浮き沈みも、ちょっとしたことが気になって仕方ないのも、全部マタニティブルーのせい。真面目な人とか感受性が豊かな人がなりやすいんだそうだ」