身ごもり政略結婚

これで赤ちゃんが女の子だったら……。
私は大雅さんの妻になる必要なんてなかったじゃない。

真紀の活躍を耳にしたばかりなのもあるのか、感情の爆発を抑えられない。


「結衣、落ち着いて」


大雅さんはいつものトーンで私の名を呼び、抱きしめてくる。

彼との距離が少しずつ縮まっているように感じるのに、嫌われてしまう。
ううん、追い出されるかも。

私は彼の肩に顔をうずめて、何度も首を振っていた。


「なにも心配いらない。結衣は今、マタニティブルー気味なんだよ」
「え……」


そんなこと思いもしなかったので、唖然とした。


「結衣の場合、つわりがひどくて急に生活環境が変わってしまった。無意識かもしれないけど、多分これからどうなってしまうのか不安でいっぱいなんだ」


不安は常にある。
自分では解消できないほど大きな不安が。


「イライラするのも涙が出るのも、気分の浮き沈みも、ちょっとしたことが気になって仕方ないのも、全部マタニティブルーのせい。真面目な人とか感受性が豊かな人がなりやすいんだそうだ」
< 165 / 322 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop